残念な年の、最高な子どもたち。

「今年の子どもたちのレベルはハンパない」。
「他園対抗戦をしたら断トツで強いと思う」。
毎年、一年の総仕上げに年長児が行う運動あそび
『メチャビー（注）』が史上最高に盛り上がっていると、
担任や体育指導の先生が言うのです。

２学期から、猫の額ほどの園庭しかない
仮園舎住まいの今年の年長児たちですよ？
確かに身体能力は高いなあと見ていましたが、
ふだん長い距離を走ることができなかった彼らです。
ときどき近所の神社や公園に歩いていって
たっぷりあそぶ機会は作ってきましたが。

3月5日。いよいよチーム対抗メチャビー大会。
噂は本当でした。
一人ひとりの顔つきが違います。
スピードがぜんぜん違います。
例年チームに数名いた、あまり乗りきれない子どもが
今年はいない。
トライ後のリスタートで、疲れた様子で
ゆっくり帰ってくる子がいない。
全力で走ってセットポジションに戻ってくる。
パスがまわる。
ボールを持った相手を恐れずにタックルに行く。
みんなの本気度がすごい。
いやあ、これまでで最高のメチャビーを見せてくれました。

いったいこれは、どういうことだろう。

今年はまようは、異年齢保育にふさわしい年長の保育目標として、
「仲間づくり」から「一人ひとり」へシフトしました。
そのねらいのために、子ども同士で友だちのよいところを言いあう
『いいところメガネ』という取り組みも始めました。
一人ひとりにフォーカスをあてることが
仲間関係をより強固にしてきた、といえる証拠は
どこにもありませんが、仮園舎の貧相な物的環境のなかで、
私たちは子どもの心の環境を損なわない努力をしてきました。

しかし昨年12月にとった保護者アンケートでは、
手厳しいご指摘を数多くいただきました。
一部をご紹介します。
「外遊びもろくにできないし、外に行ってるようすもないし、
他の子どももそうですが、よく爪をかんだり、
髪の毛もなめていたり、指を口に入れたりといった子どもを
よく見かけます。何かしらのストレスはあるかと思います。」
「今年に関しては、保育料にみあった保育なのかと
とても疑問に思えます。」
「仮設になってもはまようちえんで良かったと思える事が少なすぎる。」
「今年は工事もあったので、最後の年長さんはほんと運が悪かった
というか、何もかも残念でしかたありません。」

日々の会話、クラス＆個人懇談、ホームページ、フェイスブック、
ポートフォリオなどで日々たくましく育っていく
子どもたちの姿をお伝えし、私たちの保育と子どもたちを
理解していただこうと努力しているのですが、なかなか現実は厳しく、
このようなご指摘を匿名でいただく関係しか築けなかった方々には、
申し訳なく思います。
私たちは、なお一層努力するしかないのですが。

友だちに関心を持つ。他人事をじぶん事としてとらえる。
「不（負）」の体験や環境を友だちと協働して
じぶんで反転させる。
友だちっていいなあ。一緒だと楽しいなあ。
そして、生きるっておもしろいなあ。
子どもたち一人ひとりの胸の内に、そんな心持ちが育つように
今年も一年スタッフ一同全力を尽くしてきたつもりです。

保護者の皆さまにはいろいろご不便ご心配を
おかけした平成26年度ですが、
年少から年長まで、子どもたちはいつも以上にたくましく
育ってくれたと感じているのが私たちのいまの考えです。

今年度一年間、本当にご理解ご協力いただきありがとうございました。
（注：子どもルールのシンプルラグビーあそびのこと）